大学病院で手術を受けると、手術の内容や入院期間により異なりますが、50万円~300万円の費用が掛かります。
もちろん、これほどの入院費用が自費支払いとなるケースは少ないです。
通常は、健康保険で3割負担に軽減されたり、高額療養費制度によって医療費の支払額を収入に応じた一定額以内に抑えたりできたりします。
しかし、同じ病院で全く同じ手術を受けるのに、手術日の選び方だけで医療費の支払い額に違いがあるのを知っていますか?
医療費軽減制度があっても、手術日によっては入院費用そのものが膨れ上がったり、高額療養費制度の恩恵をあまり受けられなかったりするのです。
「手術日は現時点で予定がない日にしよう」と思っている方、20~30万円損するかもしれません。
手術を受ける予定の人は要チェックです!
入院が月またぎの時の病院への支払い
入院時に病院に支払う医療費は、退院時に一括ではなく、月単位です。
入院期間が月をまたぐときは、1日~月末までの医療費を毎月支払うことになります。
高額になりやすい入院費が分割支払いになるので、支払いが楽になる・・・と感じますが、実際は逆です。
月をまたいでしまうと、高額療養費制度の支払い額はかなり少なくなるため、トータルでは支払額が増えることになります。
高額療養費制度は月またぎ入院が損!
高額療養費制度とは、医療費の支払い負担を軽減するための全国健康保険協会のありがたい制度です。
手術の時は入院費が高額になるので、高額医療費制度を最大限に使いたいものですよね。
でも、高額療養費制度には月またぎ入院の支払い負担を考慮してくれない問題があるんです。
なぜなら、高額医療費制度は、ひと月の医療費の支払いが一定額を超えたときだけ、その超えた分に対する支払いが軽減されるという制度だからです。
Q10.月をまたいで治療した場合、医療費の合算はどうしてできないのでしょうか。
高額療養費制度を利用される皆さまへ – 厚生労働省
医療機関は、毎月、暦月単位で、ご加入の医療保険に対して医療費を「レセプト」で請求する仕組みとしており、これにあわせて、高額療養費の支給も暦月単位としています。
つまり、医療費の支払いを同じ月にまとめればまとめるほど、支給額が多くなり、トータルの支払い額が減ることになります。
月内入院と月またぎ入院の高額療養費支給額の違い
入院期間が月内か、月またぎかで、高額療養費支給額がどれくらい違うのか?
具体例でみてみましょう。
月内入院の医療費自己負担額
医療費が100万円なら、通常は3割負担になるので30万円になります。
ここで、高額療養費制度によって自己負担額は、80,100+(1,000,000-267,000)×1%=87,430円 に減額されます。
自己負担額 | 87,430円 |
高額療養費補助額 | 212,570円 |
公的医療保険補助額 | 700,000円 |
合計 | 1,000,000円 |
「月またぎ」の時の医療費自己負担額
次に、入院が月をまたいで2ヶ月に渡ってしまったときの医療費です。
最初の月が70万円、翌月が30万円で医療費の合計が100万円かかったとします。
通常なら、3割負担で最初の月は21万円、翌月は9万円が自己負担です。
高額療養費制度を使うと、最初の月は 80,100+(700,000-267,000)×1%=84,430円、翌月のは 80,100+(300,000-267,000)×1%=80,430円 が自己負担額になります。
つまり、2ヶ月分の自己負担額の合計は 164,860円 です。
1ヶ月目 | 2ヶ月目 | |
---|---|---|
自己負担額 | 84,430円 | 80,430円 |
高額療養費補助額 | 125,570円 | 9,570円 |
公的医療保険補助額 | 490,000円 | 210,000円 |
合計 | 700,000円 | 300,000円 |
グラフを見ただけでも、2ヶ月目に高額療養費制度から支給される額(赤色)が非常に少ないことが分かります。
そのため、月内入院と比べ、何と8万円近く医療費を多く支払うことになるのです。
入院費を安くするための手術日程の選び方
高額療養費制度の仕組みを知ったうえで、手術日をいつにするのがお得か、まとめてみました。
月末や下旬の手術を避ける
手術日を月末や下旬にすると、入院期間が月をまたぐようになります。
しかし、月をまたいでしまうと、高額療養費制度の支払い額はかなり少なくなります。
入院期間が月をまたがないよう、入院日と退院日が同じ月内になるようにしましょう。
入院までに高額医療費限度額認定証を入手しておきましょう。
入院時に病院窓口へ提出するだけで、高額医療費制度が受けられます。認定証は、健康保険組合に連絡すると発行してくれます。
認定証がない場合は、健康保険組合に高額療養費支払い申告書を提出することで支給を受けることもできるのですが、手術後にやるべきことを少なくしておく方が楽です。
週明けの入院は避ける
週明け月曜日に入院すると、必要以上に入院期間が長くなります。
入院日は、手術の前日というケースが多いと思います。
しかし、手術の前々日入院や、手術の3日前入院を求められることがあります。
実は、土曜日や日曜・祝日を入院日にできない病院があるのです。
たとえば、日曜・祝日を入院日にできない病院のとき、手術日を月曜日に決めると入院日は必然的に2日前の土曜日となり、入院日数が1日増えます。
3連休明けの火曜日を手術日にした場合は、入院日が3日前の土曜日となり、入院日数が2日増えます。
当然、入院日数が長くなれば、入院費用は増えてしまいます。
特に注意が必要なのが差額ベッド代です。
差額ベッド代は健康保険や高額療養費制度の対象外なので、入院期間が長くなった分については実費で支払うことになり、さらなる負担増につながってしまいます。
最近は、日曜・祝日の入院ができる病院もあるようですが、入院日程を決めるときには、手術前日の入院ができるのかどうかを病院側によく確認しておきましょう。
まとめ
手術日の決め方だけで、入院費用の自己負担が増えたり減ったりする事実を知っている人は少ないと思います。
将来の入院費用に備えたいのであれば、単に医療保険に入るだけでなく、このような医療費軽減措置についての深い知識を持つことが大切ですね。